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東京高等裁判所 昭和47年(行ケ)10号 判決

一 請求の原因事実中、本願発明につき、特許出願から審決の成立に至るまでの特許庁における手続、発明の要旨及び審決の理由に関する事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、右審決の取消事由の有無について判断する。

(一) 当事者双方の主張に徴すれば、本訴の唯一の争点は、本願発明の銅細長片が絶縁されておらず、この点において引用例のものの素導体と相違するかどうかの一点に存する。そして、成立に争いのない甲第三号証の二(本願発明の明細書及び図面)及び第四号証の二(本願発明の特許請求の範囲の訂正書)によれば、本願発明の特許請求の範囲の記載自体においては、本願発明の銅細長片が絶縁されているかどうかについて明示するところがないことが認められる。本願発明の要旨中の「密接に」は、少なくとも一つの層の上に他の層がしつかりと重ねられて捲かれていることを表わすものであることは、その用語の通常の用法から明らかであるが、右「密接に」だけからはもとより、さらにこの用語を特許請求の範囲のその他の記載と関連させてみても、銅細長片が絶縁されていないと断ずることはできない。

(二) もつとも、本願発明の明細書中の発明の詳細な説明には、「各層の細長帯は互いに多数の点で交錯しているので、電流のためには、ケーブルの全長に亘つて螺旋通路に従つてその流動をする必要はない。その代わりに電流は一層から、二反対捲き細長帯が交錯する次の層に伝導されるので、実質的にケーブルの全長に亘つてその長手に沿つて進行することができる。」、「二重捲纒は一纒回からの電流をどちらかの一平担針金の長い螺旋通路に通すことなく、次の実質的長手全体に直流動させることを許すものである。」との原告指摘の記載があることは当事者間に争いがなく、右各記載からみれば、この場合における銅細長片は絶縁されておらず、各層間にも絶縁物が介在していないことが窺われるのであつて、このことは被告も認めるところである。

(三) しかしながら、本願発明の明細書の発明の詳細な説明の他の箇所に被告主張の(イ)、(ロ)の記載があることは当事者間に争いがない。そして、引用例のものの素導体が絶縁されていることは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第二号証(引用例)によれば、引用例には、「本考案の層間絶縁は、撚合導体をして電気的に絶縁された円周方向の内外二層に分つためであり、各層に五個以上撚合螺旋方向に絶縁して内外層を互いに逆方向に等しい又はほぼ等しい撚りピツチを与える目的は、円周方向電流による軸方向磁界に基づく内層及び外層の自己インダクタンスをほぼ等しい正の値に、内外層の相互インダクタンスをそれとほぼ等しい負の値にすることにより、これらの作用なき場合の、すなわち、円周方向磁界のみによる場合の内外層の各部分の綜合実効インダクタンスの差異の影響を減少せしめて内外層に流れる電流を均一化せしめるためである。」(第一頁右欄第七行ないし第一八行)との記載があることが認められ、右記載と本願発明の明細書中の前記(イ)及び(ロ)の記載とを対比すると、いずれも同じコイル効果に関するものと認められ、したがつて、右(イ)及び(ロ)の記載は、銅細長片自体ないし銅細長片による層の間が絶縁されていることを前提とした説明であると解さざるをえない。

(四) 右のとおりであり、かつ、一般に、明細書においては、技術的に正確かつ簡明に発明の全体を記載すべく、記載相互に矛盾してはならないものである(特許法施行規則第二四条、様式第一六の備考参照)ことを考え合わせるときは、本願発明においては、銅細長片自体ないし銅細長片による層の間が絶縁されている場合と絶縁されていない場合とのいずれをも含むものとするほかなく、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

(五) 原告は、前記(イ)の記載は、銅細長片が絶縁されていない場合でも、長年月使用すると酸化絶縁状となり、コイル効果を生ずる趣旨を表わし、前記(ロ)の記載は、層間に夾雑物を生ずれば軽い被覆状態を呈し各層はそれぞれインダクタンスを生ずるが、銅細長片が各層逆捲きのためインダクタンスは相殺される趣旨を表わすものであり、また、本願発明は銅細長片を絶縁しないことによりアンテナとしての使用に最も適するようにしたものである旨主張するが、右(イ)及び(ロ)の記載自体には原告主張のような絶縁状態となる原因について明示されていないのみならず、本願発明の明細書中の発明の詳細な説明のその他の記載全体をみても、右(イ)及び(ロ)の記載が原告主張の趣旨を表わすものとは認められず、また、本願発明のようなケーブルにおいて、銅細長片が絶縁されている場合においても必ずしもアンテナとして使用できないものではないことは原告の自認するところであるのみならず、本願発明の明細書中の発明の詳細な説明の項を子細に検討してみても、本願発明のケーブルがもつぱら航空機用アンテナとしてのみ用いられるものであるとも解されない。

以上の事実によれば、本願発明は、その銅細長片が絶縁されている場合を含む点において、素導体が絶縁されている引用例のものの構成と一致するものというべきであり、したがつて、本件審決には原告主張のような違法はない。

三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。

〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

伸張負荷支持内部心要素と、一つを他の上に重ねるような工合で密接に螺旋状に相対両方向向きに心要素の周りに、そしてまた、ケーブルが撓曲される時には、このケーブルの中心線の周りに細長片を屈曲させうるように、間を隔てた連続した捲回でこの心要素との係合で重ね合わされている平坦の銅針金の少なくとも二つの細長片とから成る高抗張力及び高電気伝導度ケーブル

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